~マーケットへの情熱 受け継がれたボランティア精神~

この恐ろしいマーケットの流れはこうだ。まず入り口で係りのおばあさんから手書きの伝票ももらう。伝票といってもティッシュ箱や広告の裏紙を再利用した手作り伝票だ。そして目当ての野菜や果物を取り、テーブル脇にいる人へその伝票と共に渡し、野菜の名前と個数、値段を書いていく。テーブルをいくつかまわり、すべてショッピングが終わったら出口にいるおばあさん2人にその伝票を渡してお会計。とてもシンプルだ。しかし驚いたのが、この会計係。電卓もそろばんもない。10個20個と伝票にぎっしり書かれた金額をすべて暗算していく。優に80歳を超えている。おつりを計算するのも素早い。そして間違いが皆無に等しい。学生の頃から算数が得意だったそうで、今もこのマーケットのおかげでボケずに済むので助かっているという。
あんなにたくさんテーブルに並べられていた新鮮な野菜や果物たち。それを売っている人たちも皆地元のボランティアによるものだった。平均年齢70歳以上。皆、現役を退き、それぞれいろいろな過去を持つ人たちだった。そのほとんどがパートナーをすでに亡くした人だった。ロンもその一人で、もう17年前に最愛の奥さんを亡くしていた。皆、以前は夫婦で手伝いに来ていたがパートナーを亡くした今も続けているおじいさん、おばあさんが多かった。
なぜそんなにもこのマーケットに情熱を注ぐのだろうか。
シルビアはもう25年もこのマーケットのボスをしている。ある日、私にここのマーケットの歴史を語ってくれた。
「ここはそこら辺の他のマーケットとはワケが違うの、会社として皆プライドをもってやっているのよ」と誇らしげに彼女は切り出した。
聞くところによるとここで開かれているマーケットはWomen’s Institute と呼ばれる婦人会が元になっているらしい。2003年に米英合作で制作された映画‘カレンダーガールズ’*のモデルにもなっていて、1897年カナダのStoney Creek Farmer’s Instituteと呼ばれる農民会が始まりだった。そして1915年9月16日、初めてイギリスで発足され北ウェールズで初のミーティングが行われた。イギリスでのWomen’s Institute設立には2つの目的があり、一つは地域活性化の促進、田舎をよみがえらせること。そして二つ目は当時第一次世界大戦まっただ中だったイギリスで食糧不足を女性の力で改善していこうと励ますことだった。まさに女性たちによる復興への第一歩であった。
95周年を迎えた現在ではイギリスでナンバーワンに輝く婦人会となり、7,000の団体と208,000人の会員とで成り立っている。
*カレンダーガールズ:イギリスはヨークシャー県に住む女性が白血病の研究に寄付するため、自分たちがモデルとなってヌードのカレンダーを制作したという実話に基づいた映画である。

そしてこのマーケットに所属するシルビアおばあちゃんや他のおばあさんたちも皆、この婦人会のメンバーで、彼女たちの先輩からこの婦人会の目的を受け継いだ人たちだった。
ロンの奥さんもそうだった。17年前に亡くなって以来、ロンはこのマーケットに参加し続けている。夫婦で参加してからもう25年経つ。婦人会が主催だか、男性も参加できることはうれしいし、誇りに思うとロンは言った。毎週金曜日に公民館の他のメンバーとは別の外で一人野菜を売り続けていた。彼の陽気な人柄とたまに理解不能なユーモアセンスで地元の人たちにも大人気のおじいちゃんだ。私が加わってから二人で外で売ることになった。今では私をまるで本当の孫のように大切にしてくれる。
こんな愛に溢れた人たちと一緒に働けて幸せだと思った。
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by yukitosun | 2011-11-04 22:56 | ファーマーズマーケット