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イギリスではB&Bビジネスがとても盛んである。もともとアンティークなど古いものに価値を見出すイギリスは、家も同じで古ければ古いほど大喜びする。それに比例して家の値段も上がっていくのだから面白い。
イギリスのパブ(飲み屋)やホテルに行って「ここの建物は何年の歴史があるの?」と聞けば「だいたい400年くらいかな」とか「100年くらいだからまだ新しい方だね」なんていう返事はざらで皆誇らしげに自分の家の歴史を語る。プラス、その家に幽霊なんて出ようものなら大喜びでさらに価値が上がるなんていうから驚きだ。
イギリスのFarm Stayの中でもとてもポピュラーなのが農場にある納屋の改造建築だ。もともとは養豚舎だったり牛舎だったり活躍していた納屋が農業縮小や移行などの理由で納屋として稼働しなくなった建物を一家総出、はたまたご近所さんや友人たちに手伝ってもらって大改造をする。これは農家や農家民宿に限らず、一般家庭にも人気でロンドンに長年住んでいたが、出産を期に郊外へ引っ越し、納屋を買い取って半年から1年かけて改造し家族でスローライフを楽しむというのが30代40代のステータスにもなっている。イギリスではこのプロジェクトがTV番組で取り上げられるなどメディアの注目も熱く、ロンドンなどの大都市で時間に縛られて働き、子供を育てるよりは自然の中で人間らしくゆったりとした時の中で暮らしたいという若者が増えていて、その手の番組が夜の7時~9時のゴールデンタイムに放送されるところから見てもその注目度の高さがうかがえる。
 さて、Lowe FarmのB&B開業に向けての納屋改造計画だが、そこは以前牛舎や養鶏舎として使われていて、今にも崩れそうな石作りの納屋だった。イギリスにはリステッドビルディングという歴史的建造物を保護する法的な規制があり、建物の重要度によってグレードが決められている。登録された建物は役所の許可なしに改築や取り壊しは許されない。窓ガラスが割れたから簡単に取り換えられるわけもなく、許可がおりるまで隙間風がぴゅーぴゅーなんてこともよくある話である。その上使える素材も指定されるのでデザインなど好みで決められるものでもない。ある知り合いの家がそのリステッドビルディングに登録されていて、ある日家の門を変えようと許可なしにモダンな鉄のゲートに変えたところ、役所の担当者が飛んできて法律違反なので今すぐこの門を変えてください、と言ってきた。泣く泣く鉄の門はあきらめ、町の景観にあった木製の門をわざわざ取り付け直したという話を聞いたことがある。そこまでしてイギリスは景観や歴史を守ることにシビアな国であるのだが、ここLowe Farmでも例外ではなかった。納屋の改造を市役所に申請した時、その納屋は16世紀に建てられたものなのでその当時の面影を残すように指示がきた。石壁を修復するのにつかわれるセメントはNGで昔から使われているコッツウォルズ地方から採れるライムストーンと砂を混ぜたライムモーターというものを使う。ぐらぐらになった柱や梁も使えるところは全部そのまま残す。もちろん部分的に修復が必要なところには新しい木をはめ込む。そして足りないところにはこちらも新しい木を使うが同じオーク材を使用。改造は2004年2月~7月の6カ月間を要し、ご主人のクライブを筆頭に近所の建築家とともに完成させた。一階部分にキッチンと朝食をとるダイニングルーム。そしてお客さんに忙しい日々から時を忘れてもらえるように考えて作られたガーデンルーム。2階部分にはシングル、ツイン、ダブルルームの計3部屋。すべてトイレ・シャワー付である。
そして内装も終え、部屋にはふかふかの絨毯とセンスのいいベッドリネンたち。極力音のしない冷蔵庫やワイヤレスインターネットを完備した。テレビも薄型のデジタルTVでチャンネルも100以上ある。こんな都会の喧騒から離れ、大自然に囲まれた小さな部屋でロンドンのホテルと変わらない生活ができる。見事B&BとしてオープンさせたLowe Farm B&B、開業当初から使われていた母屋の客室2部屋と今回の一大プロジェクトで出来上がった納屋の3部屋、合計5部屋を切り盛りし、イギリスのB&B授賞式で2010年ついに11の県からなるミットランド地区で金賞を受賞した。そして約70年前にクライブのおじいさんが約5000ポンド(約60万円)で購入したこのLowe Farmは現在おおよそ200万ポンド(約2億4千万)の価値があると言われている。
くずれかけの牛舎から金賞を受賞するまでのFarm Stayになるとは誰が想像できただろうか。
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by yukitosun | 2011-08-30 13:23

ジュリエットの異変

隣の農家へ嫁いだジュリエットだったが、双子の世話や親の介護など何かと苦労が絶えなかったが、当時では珍しく町へ働きに行っていたためそれが何かといいリフレッシュになっていた。
農家に嫁いだ嫁が農家を手伝わないで外へ働きに行くなど当時ではまわりの目も厳しかったが、今から振り返るとその時の経験がすべてにおいて生きているとジュリエットはいう。
当時、銀行の窓口での仕事をしていたジュリエット、ある日突然原因不明の発作に見舞われる。ひどい咳と体中にでる湿疹、ひどいときには呼吸困難になることもあった。彼女の病院通いが始まり、これでは仕事と育児を両立することは無理と考え、なくなく仕事を辞めざるをえなくなった。
そしてある友人の勧めで出会った医者にアレルギーが原因ではないかと告げられ、検査をしてみると牛乳・チーズなどの乳製品、小麦粉、砂糖などのアレルギーを発症していたことが分かった。特に牛乳は幼少期、農場で自分で飼っていた牛からとれたミルクを飲んでいたのが現代になりスーパーで売っている牛乳を飲み始めたことが原因らしいということがわかった。そして砂糖も精製されている白砂糖はNGで、グラニュー糖などのブラウンシュガーや天然糖ならあまり問題がないということだった。
そして彼女の徹底的な食事改善療法がはじまった。大好きだった食パンを止め、ライ麦パンに改め、プディングを作るときは白砂糖の代わりにブラウンシュガーを使うようにした。牛乳も一切取らず、その代わりにソヤミルク、いわゆる豆乳に変えた。大好きだったヨーグルトも牛乳不使用の豆乳ヨーグルトへ変え、アレルギー発作も徐々に改善していった。
イギリスはオーガニック食品やアレルギー対策の食品が多く、スーパーでも簡単に手に入りやすい。双子を世話し、家族とは別の食事を作らねばならなかった苦労は想像以上のものがあると思うが、ジュリエットは当時を振り返ってこう言った。「When one door closes, another door opens」
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by yukitosun | 2011-08-30 13:21

Lowe Farmの歴史

Lowe Farm B&B ヘレフォードシャー県

ウイリィアムズ家が住むLowe Farmは約600年前に建てられた。現在の一家の大黒柱であるご主人のクライブ・ウイリアムズさんのおじいさんが1939年にこの80ヘクタールある農場を当時約5000ポンドで購入。近隣農家から羊の群れを引き連れて引っ越してきた。
当時はこのあたりでも裕福な農家で、クライブが子供のころには家にお手伝いさんがいたくらいだ。
家族は旦那さんのクライブ、双子姉弟のハンナとスチュアート。そして羊を追いかけられない牧羊犬のマックスとネズミ取りに忙しい猫のゴールディー(20歳、昨年他界)と黒猫のプリングル。
クライブはとってもシャイだけど、いざとなるとすごく頼りになる農夫さんで現在はアメリカでの農業研修を終えた息子のスチュアートと一緒に農場を切り盛りしている。
一人娘のハンナはデザイナーで、昨年近くの大学を卒業し現在はグラフィックデザインや近くのオーガニックペンキの会社を手伝ったり、ケーキのデザインを手がけたりと幅広く活躍し若いながらしっかりしていてなんでもテキパキとこなす。
そしてここLowe Farmで語らずして終われないのが奥さんのジュリエット。彼女のバイタリティーにはいつ会っても頭が上がらない。どんなにつらくても自分で自分の尻を叩くという彼女に学ぶことはとても多かった。
クライブとジュリエットの出会いは何とも甘酸っぱくてロマンチックな話で、そのことについて話すときの二人の顔がいい。結婚28年を過ぎた今でも仲が良く愛の絶えないこの夫婦は言ってみれば理想的かもしれない。
ジュリエットはクライブの実家のお隣さんで、といっても歩いていくには日が暮れてしまいそうだか、ある日クライブが遊んでいると垣根の間から隣の農場で遊ぶジュリエットを発見。その瞬間に僕はあの子と結婚するんだ!といわば確信のようなものが心の中で芽生えたという。それから二人は付き合いだし、結婚までは時間がかかったものの、1983年ジュリエットはLowe Farmへ嫁いだ。


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by yukitosun | 2011-08-30 13:09