~キッチンガーデン~
2011年 11月 11日イギリスは酪農や畜産が盛んで、Lowe Farmも作っているのは主に大麦、小麦、干し草とウール用の羊とラム肉用の羊、そして近所のじゃがいも農家に農地を貸しているので直接野菜や果物を栽培しているわけではない。以前は農家でありながらスーパーに野菜や果物を買いにいっていたが、ある日本人のお客さんに言われた一言がキッチンガーデンを作るきっかけになったという。
日本では野菜農家や果物農家が多いので、自分たちで食べる野菜もそこから賄えてしまう。その日本人女性も家が農家でやはり自分で家庭菜園もやっていた。ある朝、朝食にでてきたフルーツやトマトをみてジュリエットに「これはここで採れたものですか?」と聞いた。その後も日本人が泊まりに来るたびに同じ質問をされた。それならそうしてしまおう!と庭にクライブとキッチンガーデンを作った。はじめはお客さんに聞いたり、園芸センターで話を聞いたり、本で勉強したりして少しずつ野菜が採れるようになった。今では洋ナシやリンゴなどのフルーツ畑もつくり、夏には採れたてのラズベリーやブルーベリーが並んで、お客さんにも大好評だ。
使用する肥料にも気を配り、台所ででた野菜くずを集めておいて3年寝かしてコンポスト、いわゆる堆肥として使う。今では隣のオーガニックミルクファームから牛糞をもらってきてそれと混ぜたりもしている。
朝食で出される目玉焼きも庭で育てられている鶏の生みたての卵だ。
この鶏たち、ジュリエットはレスキューチキンと呼んでいる。なぜかというと、近くの養鶏場で育てられている鶏たち、一定の卵のサイズ、S・M・Lサイズを保つため大きくなりすぎると食用にまわされてしまう。それを知ったジュリエットはとりあえず25羽をそこからレスキューしてきた。連れてきたときと今では黄身の色や毛づやが全然違うという。最初は自由に放し飼いにされることに抵抗があった鶏たちもジュリエットの「ハロー!レイディーズ!」という掛け声とともに今では元気に走り寄ってくる。
ある朝「またミスターフォックスがきたわ!」とものすごい剣幕でジュリエットが庭から戻ってきた。そう、ミスターフォックスとは野きつねのこと。その日、私たちはきつねから鶏を守るため、かかし人形を作ることにした。「待ってて、今いらない洋服を持ってくるから」と部屋に消えていったジュリエット。持ってきたのはクライブの古着。「いいの?もうクライブ着ないの?」という私の心配をよそにせっせとズボン、Yシャツにわらを詰めていく。顔は枕カバー。そして仕上げに顔を書いて、ネクタイをしめればクライブ2世の出来上がり。ちょうどその時クライブは農業留学をしている息子に会いにアメリカに一人で行っていた。戻ってきて、お気に入りのズボンとYシャツを鶏小屋のそばで見つけることになるとは想像もしなかっただろう。
キッチンガーデンで育つ太陽をいっぱい浴びた野菜と果物、愛情をたっぷりかけられ卵を産むことに感謝されながら育てられた鶏たち、自然な時の流れがここLowe Farmではあるなと感じた。
by yukitosun
| 2011-11-11 14:28